大人になってから歯並びを整えたいと考える方が増えている一方で、「金属のワイヤー装置が目立つのが恥ずかしい」「仕事柄、口元に装置があると印象が悪くならないか心配」といった理由から、長年治療をためらっている方は少なくありません。そうした大人の矯正治療の悩みを解決する画期的な方法として近年急速に普及しているのが、透明な樹脂(プラスチック)で作られた「マウスピース型矯正装置(アライナー)」を使用した治療法です。従来のブラケットやワイヤーを歯の表面に直接接着する矯正方法とは異なり、患者様ご自身の歯型に合わせて作られた薄いマウスピースを歯に被せることで、少しずつ歯を移動させていくという仕組みです。このマウスピース矯正の最大の魅力であり、多くの方に選ばれる理由となっているのが、その圧倒的な「目立ちにくさ」にあります。
マウスピース矯正で使用される装置は、医療用の非常に薄く透明な特殊プラスチック素材で作られています。そのため、歯にぴったりと密着させて装着していても、日常生活の中で他人に気づかれることはほとんどありません。営業職や接客業、人前で話す機会の多いビジネスパーソンにとって、「周囲にバレずに歯並びを綺麗にできる」という点は計り知れないメリットとなります。また、ワイヤー矯正は一度装着すると数年間は自分では外せませんが、マウスピース矯正は患者様ご自身で簡単に取り外しができるという大きな特徴を持っています。そのため、どうしても装置を外しておきたい重要なイベント(結婚式、面接、大切な商談など)の時には、数時間程度であれば外して過ごすことができるなど、ライフスタイルに合わせた柔軟な対応が可能です。ただし、外している時間が長くなると治療計画に遅れが生じる可能性があるため、歯科医師の指示に従った自己管理が必要不可欠となります。
従来のワイヤー矯正では、装置と歯の間に食べかすが挟まりやすかったり、粘着性のある食べ物(ガムやキャラメルなど)や硬い食べ物(おせんべいや氷など)を控えるよう制限されたりすることが一般的です。また、複雑な形状をした装置の周りを綺麗に磨き上げるには専用の歯ブラシやフロスを使った高度なテクニックが必要となり、磨き残しによる虫歯や歯周病のリスクが高まるという課題がありました。しかし、ご自身で自由に着脱ができるマウスピース矯正であれば、こうした食事制限やオーラルケアに関するストレスを大幅に軽減することができます。毎日の生活に直結する「食事」と「衛生管理」の面において、マウスピース矯正は非常に優れたメリットを提供してくれます。
マウスピース矯正では、食事を取る際には必ず装置をご自身で取り外していただきます。これにより、ワイヤー矯正のように「装置が壊れるかもしれないから硬いものは食べられない」「食べかすが絡まって取れない」といった食事中の煩わしさが一切なくなります。治療中であっても、これまでと全く同じように好きな食事を楽しむことができるのは、長期間に及ぶ矯正治療において精神的な負担を大きく和らげる要素となります。さらに、食後や就寝前の歯磨きの際も装置を外すことができるため、特別な器具を使わなくても普段通りのブラッシングやデンタルフロスによるケアが可能です。また、外したマウスピース自体も専用の洗浄剤などで丸洗いできるため、常に清潔な状態を保つことができます。お口の中と装置の両方を衛生的に保ちやすいことは、大人になってからの虫歯や歯周病(歯肉炎・歯周炎)を予防する観点からも非常に高く評価されています。ただし、食後は必ず歯磨きをしてから装置を再装着するというルールを徹底しなければ、逆に虫歯リスクを高めてしまうため注意が必要です。
歯科矯正と聞くと「歯を動かす時の痛みが強くて耐えられないのではないか」「口内炎がたくさんできて辛いのではないか」といったネガティブなイメージを持たれる方が多くいらっしゃいます。確かに、金属のワイヤーを強く締めて一気に力をかける従来の矯正方法では、調整の直後に数日間強い痛みを感じることが一般的です。しかし、マウスピース矯正はデジタルシミュレーションを用いて治療のゴールから逆算し、段階ごとに形が少しずつ異なる数十枚のマウスピースを事前に作製します。それを通常1〜2週間ごとに患者様ご自身で新しいものに交換していくことで、歯に無理な負担をかけず、少しずつゆっくりと歯を移動させていきます。この「細かく段階を分けて力をかける」というシステムにより、痛みを最小限に抑えながら安全に治療を進めることが可能となっています。
マウスピース矯正は、1枚のマウスピースで動かす歯の移動量が約0.25mm程度と非常に微密に計算されています。急激な強い力がかからないため、新しいマウスピースに交換した直後こそ「歯が締め付けられるような違和感」を覚えることがありますが、ワイヤー矯正のような鋭い痛みを感じるケースは少なく、多くの場合数日で慣れてしまいます。また、金属製のワイヤーやブラケットの尖った部分が唇の裏側や頬の粘膜に当たって傷ついたり、口内炎ができたりするトラブルがほとんどないことも、快適に治療を続けられる大きな理由です。さらに、装置全体が医療用のポリウレタン系素材などのプラスチックで作られており金属部品を一切使用しないため、重度の金属アレルギーをお持ちの方でも安心して歯列矯正を始めることができます。もちろん、痛みの感じ方や治療中の違和感には個人差がありますが、「痛いのが怖い」「金属アレルギーが心配」という方にとって、非常に有力な選択肢となることは間違いありません。
ここまでマウスピース矯正の魅力的なメリットをお伝えしてきましたが、当然のことながら万能な治療法ではなく、事前に必ず理解しておくべきデメリットやリスクも存在します。その中で最も大きな壁となるのが、「患者様ご自身の自己管理能力(モチベーションの維持)」が治療の成否を決定づけるという点です。固定式のワイヤー矯正であれば、一度装着してしまえば患者様が何もしなくても24時間常に歯に力がかかり続けます。しかし、取り外しが可能なマウスピース矯正の場合は、外している間は歯を動かす力が全く働きません。理想の歯並びを手に入れるためには、患者様ご自身が強い意志を持って「決められた装着時間を厳格に守る」ことが絶対条件となります。この自己管理ができないと、せっかく高い費用を払っても治療が失敗に終わってしまう可能性があります。
歯科医院で推奨されているマウスピースの装着時間は、原則として「1日20時間以上(理想は22時間)」です。つまり、朝・昼・晩の食事の時間と、それに伴う歯磨きの時間(合計2〜4時間程度)以外は、就寝中も含めて四六時中ずっと装着し続けなければなりません。もし「面倒くさいから」「少し違和感があるから」と外している時間が長くなってしまうと、歯が計画通りに動かないばかりか、元の位置に戻ろうとする「後戻り」という現象が起きてしまいます。その結果、次の段階のマウスピースがはまらなくなり、治療計画の練り直しやマウスピースの再作製が必要となり、結果的に治療期間が長引き追加費用が発生するリスクが高まります。また、外食先で装置を外して紙ナプキンに包んだまま忘れてきてしまうなど、紛失トラブルも自己管理の範疇となります。マウスピース矯正は「いつでも外せる」というメリットの裏返しとして、「自己責任でしっかり装着し続ける意志」が不可欠な治療法であることを肝に銘じておきましょう。
マウスピース矯正は近年、デジタル技術の進歩により適応できる症例の幅が大きく広がってきました。以前は「前歯の軽度なガタつき(すきっ歯や軽度の叢生)」しか治せないと言われていましたが、現在ではアタッチメントと呼ばれる補助器具を併用することで、ある程度複雑な歯並びにも対応できるようになっています。しかし、それでも万能ではなく、お口の状態によっては「マウスピース単独では治療が困難」あるいは「ワイヤー矯正の方が早く綺麗に治せる」と診断されるケースが確実に存在します。ご自身の歯並びがマウスピース矯正に適応しているかどうかは、事前の精密検査(レントゲン、CT撮影、口腔内スキャナーによる3Dデータ採取など)を経て、専門知識を持った歯科医師が総合的に判断する必要があります。
マウスピースは歯を「押し込む」力には優れていますが、歯を大きく「引き出す」動きや、根元から平行に大きく移動させる動きはやや苦手としています。そのため、重度の叢生(歯が極端に重なり合って生えている状態)で抜歯をして大きなスペースを埋める必要があるケースでは、マウスピースだけでは歯の根っこがついてこず、歯が傾いて倒れてしまうリスクがあります。また、歯の生え方だけでなく「上顎と下顎の骨格的なバランス」に大きなズレがある場合(重度の出っ歯や受け口など)は、歯列矯正だけでなく顎の骨を切る外科手術(外科的矯正治療)を併用しなければ根本的な解決になりません。さらに、事前のシミュレーション通りに歯が動かなかった場合、リカバリーとして一時的にワイヤーやゴムを使用した治療を併用する可能性もゼロではありません。治療の限界や適応範囲には個人差があるため、初回のカウンセリング時に歯科医師からしっかりとリスクや代替案についての説明を受け、ご自身の症例に適した治療法を見極めることが重要です。
大人の歯科矯正治療を検討する際、どうしても避けて通れないのが「費用」と「治療期間」の問題です。日本の公的医療保険制度では、虫歯や歯周病の治療といった「病気の治癒」を目的とする処置には保険が適用されますが、見た目を美しく整えることを主な目的とする一般的な歯列矯正(マウスピース矯正、ワイヤー矯正ともに)は「審美目的」とみなされ、原則として健康保険が適用されない『自由診療(自費診療)』となります。(※顎変形症などの厚生労働大臣が定める特定の疾患に起因する場合は除く)。そのため、治療にかかる費用は全額自己負担となり、決して安い金額ではありません。また、自由診療であるため、同じブランドのマウスピース矯正システムを導入していても、歯科医院によって料金設定やサポート体制が大きく異なる点にも注意が必要です。
マウスピース矯正の費用は、歯並び全体の噛み合わせからしっかり治す「全体矯正」の場合、およそ70万円から100万円以上かかるのが一般的です。前歯のわずかなズレだけを治す「部分矯正」のプランであれば、30万円〜50万円程度で済む場合もありますが、奥歯の噛み合わせに問題がある場合は全体矯正が必要となります。また、費用を比較する際は、初期費用の安さだけでなく「毎回の通院時の調整料(再診料)」や「治療計画の変更に伴う追加マウスピースの作製費用」「治療後の保定装置(リテーナー)の費用」が含まれているトータルフィー制度(定額制)かどうかなど、総額でいくらかかるのかを事前に明確にしておくことがトラブルを防ぐコツです。さらに、治療期間に関しても個人差がありますが、一般的に1年〜3年程度の期間を要します。そして最も忘れてはならないのが、歯が綺麗に並んだ後も、歯が元の位置に戻ろうとするのを防ぐために「保定装置(リテーナー)」を数年間(治療にかかった期間と同等以上)装着し続ける必要があるという点です。費用や期間の全貌をしっかりと把握し、納得した上で治療をスタートさせましょう。
透明で目立たず、食事や歯磨きが普段通りに行えるマウスピース矯正は、見た目やライフスタイルへの影響を最小限に抑えたい大人のビジネスパーソンにとって非常に魅力的な選択肢です。一方で、1日20時間以上という厳格な装着時間を守る自己管理能力が求められ、適応できない歯並びがあることや、高額な自費診療となるデメリットもしっかりと理解しておく必要があります(※治療効果や期間、痛みの感じ方には個人差があります)。メリットとデメリットの双方を正しく把握した上で、豊富な実績を持ち、信頼して相談できる歯科医院を選ぶことが、失敗しない矯正治療の第一歩となります。まずは複数の医院でカウンセリングや精密検査を受け、ご自身のライフスタイルに最適な治療計画を見つけてみてください。
マウスピース型矯正装置のメリット・デメリット|鈴木歯科医院
インビザライン(マウスピース矯正)のメリット・デメリットを図解
マウスピース矯正 | ピーデンタルクリニック桃谷駅
津田沼でマウスピース矯正をお考えの方へ – コスモス歯科クリニック
医療情報ネット(ナビイ) – 厚生労働省